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その前にバレンタインの続き。 なんか、考えてたのとは違う方向へ…。 おまけに、無駄に長くなりました。あーもう。 続きは、14日に。 「バレンタインに薔薇を、あなたに」 22:00 聖バレンタインの夜。 現場ではレコーデングも佳境を迎えていたが、本日の作業は夕方で終了。 恋人がいるスタッフはそれぞれ花束やプレゼントを抱え、嬉しそうに待ち合わせの場所へと消えていった。あぶれた面子は今ごろやけっぱちのパーティでたらふくワインを飲んでいる頃だ。 シェリルはマンションへと帰宅して、ピザとシャンパンで軽い夕食を取り、夜のストレッチを済ませてからゆっくり風呂に入った。 薔薇のオイルを垂らして、花の香りに包まれたシャボンの中に身体を浸す。 ふと、S.M.Sの宿舎に送りつけた大量の薔薇の束を思い出して、シェリルは小さな声で笑った。 「なによ、アルトが悪いんだから」 絶対、私からは謝らないんだからね。 決意も新たにバスルームを出て、恋人を出迎える支度をする。 来る時間を考えると、彼も食事を済ませているはずだ。冷蔵庫の中にある冷えたワインを再度確認して、グラスをふたつ準備した。つまみには、チーズと生ハムとフルーツ。それからサーモンとホタテの刺身、アルトの好物だ。 夜9時以降の食事は、カロリーコントロールからすると断然NGなのだが、今夜は特別なので勘弁してもらう。その分明日以降の運動量を増やそう。 何を着るかしばらく悩んで、先日購入したばかりの膝上10センチのローズピンクのワンピースを着た。外出するならこれにカラータイツを合わせるのだが、風呂から上がりたての生足のままだ。 いつものイヤリングと、クリスマスにアルトからもらったパールのネックレスをつけた。 あんまりムーディにすると、アルトは嫌がる。さじ加減が意外に難しいのよね……などと考えていると、セキュリティ装置が作動する微弱の電子音の後、来客を告げるベルフォンが柔らかく鳴り響いた。 カメラモニターを覗くと、仏頂面のアルトが立っている。 いつもの軍のコートにS.M.S仕様の安全ブーツ姿。記念日におしゃれをする考えは頭からなかったらしい。 (もしかしてワザとなのかしら) 女心には鈍感だが、育った環境からかTPOには聡いはずだ。恋人のマンションにプレゼントを持って訪問する時の格好くらい思いつきそうなのに、どうもこの男、シェリルの前だといつもより殊更に自分を無骨に見せたがる傾向がある。 そのくせ、呆れるほど世話焼きで、甘い時には徹底的に甘い。 なかなか一筋縄ではいかない男なのだ。 (まあいいわ、お互い様なんだし) 右手に白い薔薇の花束を持ち、左手に菓子箱らしきものを抱えているのを見て、シェリルはにこりと笑った。 せっかくのバレンタインデイなのに、ケンカするなんてもったいないものね。 ロックを解除して、マンションの内部へと彼を迎え入れた。 「おまえ、なんだよアレ。いい加減にしろよ」 ケンカなんてしない、そう決めていたのに。 開口一番の文句に、シェリルの笑みがひび割れる。 「あら、アルトのくせに、何か文句でもあるのかしら」 「物には限度ってもんがあるだろ。あんな大量のバラ、処理するのにどれだけ手間がかかったと思ってるんだよ。大体おまえは無駄遣いが多すぎる」 「おあいにくさま。アレは新曲のプロモで使った小道具の残りよ。使い終わって処分するだけだったのをもらい受けたの。使ったのは撮影センターからあんたの寮まで運んだ運送費だけ」 「どうして、そんなややこしい事をする必要があるんだよっ」 「なによっ、だったらさっさと捨てれば良かったじゃないっ!」 「……捨てたら怒るくせに」 「怒るわよ、決まってるでしょ」 雲行きが怪しくなってきた。アルトは出会った時から渋い表情を隠そうともしない。せっかくの薔薇を彼女に捧げる事もせずに、片手でぶら下げたままだ。 白い花弁が力なく垂れ下がる様は、うなだれて涙を堪える人の様子にも似て。 アルトの低い声が耳朶に響く。 「……他人を振り回して、楽しいかよ」 怒りを含んだ真剣な男の声に、シェリルはびくりと肩を震わせる。 「シェリル」 頭を上げて、シェリルはアルトの顔をにらみ付けた。 感情が渦巻いて上手く言葉が紡げない。ただ、頭を垂れたら負けだと思った。 アルトが怒るかもしれない、とは少しだけ思った。けれど許してくれるとも思った。アルトに対して腹を立てていたのも本当だった。 だって、ずっと待っていた。誘ってくれるのをずっと待っていたのに。 アルトの声が恐かった。 嫌われたら、どうしよう。 でも、アルトだって絶対に悪い。 悪いんだから! 「なによ……っ」 シェリルの顔がくしゃりと歪み、身体が数歩後ろに下がった。 その姿を目の当たりにして、怒りに支配されていた男の表情が一気に揺らぐ。アルトは咄嗟に彼女の腕をつかんだ。握っていた花束が床に落ちるが、拾い上げる余裕はなかった。 彼女がムキになって言い返してくる時はそれほど気にする必要はない、本当にやばいのは逃げようとする時だ。 人との繋がりに臆病なシェリルは、本当に傷ついた時、逃げて本心を隠そうとするのだ。 「待てよシェリル」 「なによ、なによ…嫌々来るなら、来なきゃいいじゃないっ!」 叫んだ声はもう嗚咽で震えている。大粒の涙が青い瞳からいくつもこぼれ落ちて、彼女の頬を濡らした。 シェリルが腕を引いて、アルトの拘束から逃れようとする。アルトの右手はシェリルの腕をつかんだまま動かない。 アルトが力任せに引っ張ると、『銀河の妖精』と呼ばれる少女のか細い肢体が泣き声と共に腕の中に落ちてきた。 「ア、アルトがバレンタインなんか、どうでもいいと思ってるんだって、ほんとうは分かってたわよっ。でももしかしてあんたから誘ってくれるかもって、思って、まって…待ってた私がバカみたいじゃないっ!!」 「もういいわよ、帰りなさいよっ、アルトがいなくたって、私は別に平気なんだからっっ!」 キライ、アルトなんかキライ。ダイキライ。 泣いて叫んで、むちゃくちゃに暴れる恋人の身体を両腕で押さえつけながら、鈍い男はようやく気づいた。 つまりは、自分がそもそもの原因なのだと。 10分以上は泣いていただろうか。アルトは黙って彼女の背中を撫でている。謝る事をしない代わりに、シェリルを問い詰める言葉も発しない。 涙は少しずつ収まっていった。泣き疲れた喉が不規則なテンポで跳ね、ひっくひっくと音が溢れる。 まぶたの辺りが熱を帯びて、腫れぼったい。アルトのシャツに顔を押しつけて目尻に残った涙を拭ってやった。彼のお気に入りのシャツを涙で汚して、ようやく少しだけ気分が晴れた。 そっと顔を上げると、見下ろしてくるアルトの瞳と、視線がかち合った。 「……ひでえ顔」 「なっ」 「うそだって。くしゃくしゃになってても、お前は美人だよ」 アルトの指が、シェリルの前髪を梳く。乱れた髪が彼の繊細な指で整えられてゆく。 髪への愛撫に、波打っていた感情が次第に凪いでゆく。 涙も止まって、呼吸も落ち着いた。シェリルは息を継いで、言った。 「アルトのばか。だってバレンタインよ」 「ああ」 「みんな、恋人の所へ飛んでっちゃったのよ」 「らしいな」 「だったらあんたも飛んで来なさいよ。このシェリル・ノームがずっと待ってたんだから」 「次からはもう少し、分かりやすい方法で伝えてくれないか、それ」 「……そうするわ」 彼の背中に手を回して、ぎゅっとしがみつくと、アルトは腕の中に囲い込むようにして、シェリルを抱き締めてくれた。 それから、落ちていた花束を拾い上げて、彼はシェリルにプレゼントを手渡した。 薔薇とチョコレート。それから小さなジャムの瓶。 「ジャム? アルトの手作り?」 「お前のバラさ。紅茶に入れるとうまいぜ。いれてやるよ」 「うん……ねえ、今日は泊まってくでしょ?」 「仕方ねえから、泊まっていってやるよ。どこかの誰かさんがまた泣いたら、大変だからな」 「あんたって、ホント最近ナマイキ」 「鍛えられたと言ってくれ」 手を繋いで、二人でリビングへと入ってゆく。バレンタインの準備が出来ている、その部屋の中へと。 ※最後に一行、何か入れようとして、さんざん悩んだあげくに どれもうまくはまらなかった。ので結局、何も入れてない。 何か一行入れたら、次にうまく繋がるような気がするのに、その「何か」がどうしても出てこない。 結局タイムアップ…一時間以上考えて出ないなら、諦めろ私。 あー、私って、あんまり上手くないんだなあ…とへこむ瞬間。 つかそもそも意図した方向からは既に違ってきてるし、この話。 もうちょっとだけ続きます。
by ktsukisan
| 2009-02-09 23:39
| MF・小ネタ
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